食料自給力指標を考える
最近、食料自給力という言葉を耳にする機会が増えました。
食料自給力とは何かというと、食料安全保障に関する国民的な議論を深めるために平成27年に作られた指標のことです。
農水省のページでは、「我が国農林水産業が有する潜在生産能力をフルに活用することにより得られる食料の供給可能熱量を試算した指標」とされています。
国内生産のみで最大どれだけのカロリーを生み出せすことが可能かを計算した指標ということですね。
写真は令和4年度の指標です。
芋類中心の作付けにした場合、国内生産だけで成人に必要なカロリー量のほとんどを確保できるという計算になっています。
一見、「おーっ!!それは凄い!!もっともっと芋を!!」となってしまいそうですが、そんなに単純な話しではないでしょう。
しかし、贅沢品も含めたカロリー摂取量を分母に置いた食料自給率だけでは本質を判断できないことも多いと思いますから、こういう指標も含めて目指すべき未来の姿を考えるのはとても大切なことだと思います。
個人的には、米を中心とした作付体系は今後も重視されていくと思いますし、そこに大きな変化も起こりづらいのではないかと思っています。
また、長年の歴史の中で日本の食文化の中心を担ってきた米は、保管や流通のインフラも整備されているでしょうし、安定供給の面で見ても芋よりも勝ると思いますので、現在の日本の状況で考えた場合、芋よりも米の方が遥かに効率よくカロリーをストックすることができるでしょう。
こういうことを考えれば考えるほど、米を政策で減産してきた代償はとてつもなく大きなもののように思えてきます。
と、減反の話しはさておき、さつまいもやじゃがいもは自給率も高く、野菜の中でもカロリーの高い品目です。
しかし、令和3年度の統計データを見てみると、国産の芋類が占めるカロリー構成比は全体の約2%程です。(飼料自給率を反映しない国産カロリー、(澱粉は除く))
思った以上に少なくて驚きました。
作付面積の最近のデータを見ると、じゃがいもとさつまいもを合わせて約10万ヘクタール程となっていますが、上記カロリー構成比と合わせて考えると、現時点、芋類を作付け体系の中心に置いた時の非現実性を感じずにはいられません。
もちろん、お芋栽培における劇的な省力化や単収向上の技術発展があれば話は変わってくるのかもしれませんけれど、貯蔵性や連作耐性の低さなどを考えると、私にはその未来のポジティブな姿が今の所想像できません。
一方、米は作付面積約135万ヘクタール程で国産カロリーの約40%程を生み出しています。
カロリーの生産効率的に考えても、日本が米を生産の中心に置いていない未来は想像し難いです。
先ほどから、「芋を中心に置いた作付けなんて非現実的だろう」というような話を展開していますが、自給力指標は「芋を中心にした方がいいに決まっている」ということを言っている訳ではないと思いますので、そこに対して突っ込みを入れたいという話ではありません。
また、私は「もっと芋をたくさん育てようかな??」と思っている所があるくらいですので、ここで芋が米よりも劣っているという話をしたい訳ではありません。
食料を取り巻く環境は時代と共に目まぐるしく変化していくものですから、特定のものに頼りすぎない、芋類を積極的に活用したカロリー生産の新たなバランスを検討していくことは大切だと思いますし、自給力指標についても好意的に捉えています。
本文の主題は、「様々な指標を用いて、未来の国産カロリーの生産方法を考えることはとても大切なように思っている」というものになります。