科学者たちが語る食欲
少し前に、「科学者たちが語る食欲」という本を読んだのですが、その中で、「バッタは自分たちに必要な栄養を理解して食べ物を選んでいる」という、大変興味深い実験結果のことが書いてありました。
バッタは、口部や足に味毛が発達していて、食物に触れることにより、その中に含まれている化学物質を認識できるらしく、自分に不足している栄養が入っている食物を感知すると、それを食べろという信号が脳に送られるとのことです。
食べるものの選択肢が多数あるときでも、食欲システムが協力し、多種の組み合わせの中から「今食べるべき適切なもの」を正確に割り出してくれるらしいです。
また、その逆で、選択肢が少なくバランスよく栄養が摂取できないと判断した時は、炭水化物欲とたんぱく質欲が主役になり、それを満たしてくれる食べものを選択するようです。
そして、いかなる時も最優先されるのはたんぱく質であるとのことです。
例えば、炭水化物が多くてたんぱく質が少ない食べものしかなければ、量を食べることによってたんぱく質をとろうと努めますし、逆にたんぱく質が多い食べものが用意されていれば、そんなに食べなくてもたんぱく質を摂取できるので、食べる量が少なくなるという感じです。
たんぱく質ターゲットの達成が最も重要になっているということですね。
ここで面白いなと思ったのが、たんぱく質ターゲット達成のために炭水化物を大量にとったバッタは、肥満になり、成虫になるまでの時間がかかる傾向にあり、逆に高たんぱく質食で少食ケースの場合だと、エネルギー不足に陥り生存率が下がる傾向にあるようで、どっちに振りすぎても何かしらの代償を支払わなければならなくなってしまうことから、栄養の選択肢が多い時は、たんぱく質と炭水化物の最も健康的な配合、生存と成長を最も促進させる配合を選択するようです。
人間は感覚的にこういうことを体で的確に察知して必要栄養分をかぎ分けることはできませんが、不足している栄養に対して美味しさを感じたり、激しく欲したりする機能はあるようですから、食欲や体調という本能に従って食べるものを選択することは、健康維持という観点からみてもとても大切なことなのだろうと思います。
また、クロバエは、糖とアミノ酸の味を足や腹部で感知し、必要な栄養分が豊富な所に卵を産みつけるということも書かれていましたが、それぞれの認知方法や精度に違いはあれど、多くの生物は、必要な食べ物を思った以上に細かく理解して選択しているのだなと思いました。
それを考えていくと、「なぜ食害される野菜はやたらと食害されるのか??」という問へのヒントがここにあるような気がしています。
窒素は、アミノ酸を合成し、たんぱく質を作る役割があると言われていますが、これが過剰であると虫がつきやすいと言われる理由にそれなりの意味があるとも思えてきます。
複雑な難題を数学やコンピューターなしでやってのける自然に改めて畏怖の念を覚えています。