砂糖と牛骨とヴィーガン認証と
今週のBlogは砂糖のお話です。
何のきっかけでそのような話になったのかは忘れてしまいましたが、先日、農仲間と砂糖の話に花が咲いて、その話の中で、「砂糖にもヴィーガン認証のものがある」ということを教えてもらいました。
僕はそのことを全く知らなかったのですが、どうやら、砂糖を白くする精製過程で牛の骨が使われているものがあるらしく、それを使用していない砂糖にその認証を得る権利が与えられるものであるとのこと。
(調べてみた所、大東製糖株式会社さんが2020年に日本で初めてヴィーガン認証を取得した砂糖「てんさいのお砂糖」を販売開始したという記事を見つけました。)
知らないことを教えてもらえるのは本当にありがたいことです。
■「そもそもなぜ牛の骨を使うのだろうか??」
ヴィーガン認証のことはひとまず置いておいて、その製造工程の謎にめちゃくちゃ興味がわきました。
また、話の中で、「白砂糖でなく、てんさい糖であれば大丈夫な筈??」というようなことも教えてもらったような記憶が残っていて、その辺りのことにも強く好奇心をくすぐられましたので、少し考えてみたいと思いました。
まず、僕の疑問点を整理すると
●そもそも牛の骨を使わなければ砂糖は白くすることができないものなのか?
●てんさい糖の原料である「てん菜」からも、上白糖、グラニュー糖が作られる筈だが、その製造過程でも牛の骨を使うものなのか?? 「てんさい糖であれば大丈夫??」というのは、そもそもてん菜を原料としたものという枠での話のことではないのか??
●仮に多くの白砂糖の製造工程で牛の骨を使うことが大前提になっているとして、逆に使っていない業者さんもいるのか?? またそのシェアってどのくらいなのだろう??
というような感じです。
上記のような疑問に対し、お話をしていた仲間と「ああーでもないこうでもない」と考えを出し合ったり、自分でも簡単に調べたりしましたが、どうもスッキリする答えに辿りつくことができなかったので、後日、てんさい糖を製造されているホクレンさんに問い合わせをしてみました。
こういうことでスッキリしない時は、専門家や実際に現場で作られている方に聞くのが一番早いと思いますしね。
下記回答文内の一文を紹介いたします。
砂糖の製造工程では、糖液中の不純物である着色物質の吸着除去を主目的とした清浄工程において、一般的にはイオン交換樹脂や活性炭が使用されており、一部では骨炭が使用されておりますが、弊会にて製造しておりますグラニュ糖・上白糖・てんさい糖の製造工程におきましてはイオン交換樹脂のみを利用しており、動物性骨炭は一切使用しておりません。
理由といたしましては、骨炭と比較し、イオン交換樹脂は使用寿命が長く(骨炭は使い切りのため)、弊会の製造プロセスでは、イオン交換樹脂を使用しております。
(面倒な問い合わせであっただろうにも関わらず、早急にとてもご丁寧な回答をいただけたこと、ホクレンさんには心よりお礼申し上げます。)
このホクレンさんのご回答と、自分で調べたいくつかのデータを照らし合わせながら考えていくと、ひとまず、「砂糖を白くするために必ずしも牛の骨が必要な訳ではなさそうだ」ということが分かったということと、「基本的に砂糖の清浄過程で牛の骨ってそこまで使われていない可能性も高いのかも??」ということが考えられるようになりました。
なぜなら、返答文でも「砂糖の~清浄工程において一般的にはイオン交換膜や活性炭が使用されており」と書かれているからです。
(ちなみに、甘しょ糖(サトウキビ由来の砂糖)のことについてもお聞きしていますので、てん菜に限らないご回答なのだと判断しております)
ただ、その一方で、色々と調べていく中で出会ったコンテンツの中には、
「日本の多くの工場は、脱色工程として“(炭酸飽充)→骨炭濾過→脱色用イオン交換樹脂”の順で処理を行っている。」
というような情報もあったので、まだまだもっと深く理解するためには明らかにファクト情報不足ですけれど…。
また、業界全体での使用率に関しては結局分からずじまいという感じですが、もしその辺りのことをご存知の方がいらっしゃったら是非教えていただけたら嬉しく思います。
実は牛骨の使用シェア自体がめちゃめちゃ低く、使用していない業者さんがある程度明らかになっていたとしたら、牛骨を使用されていることを気になさっている方にとって、白砂糖の選択のしやすさが変わったりもするものなのでしょうかね??(ヴィーガン認証のあるなしに関わらない選択肢が増えるという意味で)
僕はその辺のことをあまり知らないので、需給のニーズやイメージが全然分かりませんが、気になさっている方はそういうことも含めてもう全部把握済みだったりする??
というか、そもそも白砂糖を使わない人も多そうなイメージがあるから、そういう人にとってみたら全く関係ないのか…。
この辺のことは、今度、実践されている知人に聞いてみるのが早そうなので、そうしようと思います。
「砂糖、動物性」などのキーワードで色々と調べていると、この他にも、「カニ由来のキトサンという成分が…」とかいう話もあったりしますが、もうキリがなさそうなのでこの話はこの変でやめておこうと思います。別にこのことを深く掘りたい訳でもないですしね(笑)
今回、仲間との話の中から広がった砂糖への疑問ですが、僕の身近には刺激的な問いや知識を与えてくれる仲間がいるな〜ということを改めて感じました。
しかも、皆さん「ああでもないこーでもない」と一緒に僕の疑問につきあってくれたりしますし。
全然知らない領域が沢山あるということを知ることや、自分の世界の外で巻き起こっている多様な文化や挙動例に触れる機会は、僕の思考の幅をガツンと広げてくれますので、皆さんにはいつも本当に感謝しております。
一緒に物を考えてくれる仲間がいるって本当に幸せなことだな~と思います。
■ヴィーガンについての私見
ちなみに、僕はヴィーガンという思想に対して、否定も肯定もしない派です。
これは思想の是非を問うものでもないような気もしますし。
僕自身はそういった思想に沿った行動に一定の理解は示していますが、今の所は自分がそうなりたいとは思っていません。
僕の周りにはそういうことを大切にしている友人、知人がそれなりにいますので、そうしたいという気持ちになる人がいるということは理解したいと思っていますし、素晴らしい側面もあるのだろうという感情も覚えますので、そのアクションや思いを尊重したいと思っています。
ヴィーガニズムに対し「社会に押し付けすぎる人がいることを問題視している」というような文脈で語られたセンセーショナルな記事を目にすることがたまにありますが、そのことに対して私見を述べるのであれば、僕はそんなエクストリーム系の人は極一部だと思っていて、多くの人が、とても真面目に自分たちの大切にしたいことを生活や社会に取り入れる術を考えた上での、極めてポジティブな一選択なのだろうと思っています。
ただ、その一方で、健康という文脈で偏った見方がされすぎてしまうことには少し違和感を覚えていたりします。
(上記のことと一緒でそのような人は少ないのかもしませんが、実際、たまにいらっしゃったりするので)
なぜなら、同じものを食べたとしても、人それぞれ食べた後の反応が違うように、そこには向き不向きもあると思いますし、その自分の身体の特性を本当に理解するためには、色々な食材を自分の身体で何度も確認しながら、丁寧に自己対話&専門家と分析していくことが必要な領域だと思うからです。
まだまだ明らかになっていないことの多い複雑な領域ということもそうですが、そもそも食の分野における絶対的なものなんて存在しないと僕は思いますので、ヴィーガン=健康 というような単純な結び付けはしない方がよいだろう、と思っていることですね。
そりゃもちろん健康になる人もいるとは思いますけど、「必ずしもそうではない」という感覚を、その利点を伝える側が発することはとても重要なような気がしています。
そのようなことから、主義と思想の大切さが伝播されていくことは素晴らしいことだと思いますが、それが絶対的に正しいものとして教え込んではいけない分野なのだろうと感じています。
どんな領域のことでもそうですが、「他人にもわかって欲しい」という気持ちを強く発動させすぎないことはとても大切なことのように思います。
(僕もそれでよく妻と言い合いになりますし(笑)分かって欲しいオーラを出して良いことあった試し一つもないような気がしてます(笑))
本当の多様性って、多分そういうものなのではなかろうかと僕は思っています。