有機認証を取得する上で生分解性マルチが使えない資材となっている理由は、「製造工程で化学的な処理を行なっているから」
今年は生分解性マルチを一部で使ってみることにしました。
理由は、効果の程を知りたいという欲求が湧きあがり、自分でも試してみたいと思うようになったからです。
以前にも書きましたが、現時点では、有機認証を取得する上で生分解性マルチは使えない資材となっています。
その理由は「製造工程で化学的な処理をしているから」ということになっています。
そのようなことから、「有機認証を取得できない資材だから土壌に悪影響を与える可能性がある」とか「土に入った毒物を回収できない」などというようなことを言う人もいます。
その一方で、環境にやさしい循環型社会の形成を目指し、国策で利用促進事業なんてものが立ち上がったりしています。また、環境配慮の文脈で使用している人も確実に増えているという事実があります。
ややこしいですね。
これは日本だけのことでなく、世界的に見ても同じようなものらしく、「環境に優しいもの」として積極利用が推進されている一方で、環境への潜在的な影響については、まだ十分に研究されておらず、国際規格的にも現在も研究段階にあるとのことです。
以下()内、Mordor inteligenceの市場規模と成長傾向の予測レポートより引用
(生分解性マルチフィルム市場は、予測期間2021年〜2026年に年平均成長率8.5%を記録すると予測されている。土壌中での生分解性は、農業・園芸製品に大きなメリットをもたらす。生分解性マルチングフィルムは、耕作者がリサイクルのために畑から回収する代わりに、使用後にバイオプラスチックマルチを鋤き込むことを可能にし、作業効率を向上させる使い勝手の面で急速な改善を遂げた。しかし、生分解性マルチを使用することによる潜在的な環境への影響については十分に研究されておらず、その安全性を検証するための国際規格であるISO 17088、ASTM D6400、ISO 17556、ASTM D5988などは現在研究段階にある。 )
有機農業や循環のようなことに強いこだわりを持つものを激しく惑わせるようなややこしいアイテムですが、こういうものは、なるべく融通無碍に考えたいと思っています。
また、私は現時点で生分解性マルチ肯定派であり、農業全体で考えればポジティブな可能性の方が遥かに多いと思っています。
現時点では、有機農業で使えないというルールになっていますが、北海道の玉ねぎ栽培における、機械移植用の育苗用土の粘土調整用資材のような特例が出てくる可能性が今後ないとも言い切れないので、今後の動向に注目しています。
うちは現在、有機認証を取得していませんし、今後取るつもりもありませんので、自分の考える美しい農業をする上で、使用する資材は自分の判断で決めたいと思います。
私は有機認証のために有機農業をやっているわけではありませんし、自分の自然観の中で素敵だと思える農業手法を選んでいった結果、たまたま有機的な手法に落ち着いているだけですのでそのように思います。
また、「天然の方が環境に優しい」、「化学は環境に優しくない」のような極端な話に縛られてしまって、その規格の中でしか物を考えられない有機農業が本当に良い農業の形だとは思えません。
農業手法の選択に正解不正解も優劣もないと思いますので、農家それぞれが、今ある選択肢の中で自分の納得のいくものを選択すればいいと思っています。
そのそれぞれの地道な試行錯誤の中から、時代時代に応じた「どう考えてもこっちの方がいいよね」というような、世の中で稼働する意思が生まれ、自然とより良い形に全体が変化していくのだろうと思います。
ところで、この件について、バイオマスブラや有機認証の関係機関のいくつかに問い合わ
せをしたことがあります。
その中で「有機JASの生分解マルチ使用不可の理由は「化学物質、化学的処理をされたものを土壌へすき込み取り除かない」点にあり、有害であるなしではない」とおっしゃっている方がいました。
仮にもしそうだったとしたら、是非、運用の見直しを行ってほしいものだと思いました。