大豆、小麦の生産量推移から昨今の助成について考える。
昨今、ロシア、ウクライナ侵攻や円安の影響などもあり、「今こそ大豆や小麦の自給率を高めよう!!」というような声を聞く機会が随分多くなった気がします。
「今だからこそ!!」的なお話を聞く機会も多いので、一応確認しておくと、大豆や小麦の自給率を高めるための増産政策は、最近になって始まったことでなく、ずっと前から考えられていることでもあります。
1970年代のソ連の穀物大量買い付けや大豆禁輸、2000年代に入ってからのアメリカでトウモロコシのエタノール生産増加、世界的な干ばつや洪水による凶作などなど、その他にも色々な事例があると思いますが、予測不能な突発的な出来事や国際情勢の影響による食料問題は常について回るものですから、グローバル経済の中で食料輸入依存度の高い我が国が、小麦や大豆の増産政策を常時考え続けなければならない立場にいることは想像に難くありません。
そんなことを考えていた所、「そういえば、日本は随分と長い間、小麦、大豆増産促進政策がとられているけれど、生産量ってどのくらい上がったんだろう??」ということが気になったので調べてみました。
(添付写真、農林水産省の統計資料、食糧需給率から引っ張ってきたデータを簡易グラフ化したものです)
予想以上に増えていない………というかほとんど増えていない。
ここ20年の10aあたりの総収穫量も見てみましたが、北海道は多少増えてはいるものの、都府県に関してはむしろ減っています。(小麦、大豆とも)
もちろん70年代に比べれば多少増えてはいますが…
小麦や大豆は、気候的にも土地的にも日本では育てづらいことから、反収を上げづらい作物ということもあるのでしょうが、数字的に、こうも政策が結果に寄与していないのであろうことを知ってしまうと、昨今の「食料危機問題を大豆と小麦を生産して救おう」というようなPRや、拡大する大豆や小麦の転作助成規模に対して、「それ、このまま行っちゃって大丈夫なのかな??」というような気持ちも芽生えてきます。
もちろん、品種改良や自動化など、更なる技術革新により、今後できることも増えていくとは思いますし、将来的な人口縮小はあるにせよ、小麦や大豆の国内生産力が上がることに悪いことは一つもないと思いますので、変わらずに増産を目指すことも、それを促進させていくことも必要だとは思っています。
しかし、「どこもかしこも増産支援するべきかどうかというとそれは違う話になるのではないか??」と、先のデータから考えさせられています。これが本文の主題になります。
とはいえ、僕は業界全体に対して専門的な知識を持っているわけでもなく、水田転作助成や大豆、麦の生産助成を受けようと思ったこともないので、政策の細かな部分は追えていないですし、近隣農家以外の考えや農政のビジョンに関してもよく分かっていない部分も多いので、これはただの素人の雑感に過ぎません。
しかし、最近、水田畑地化の話と助成金の話がやたらと聞こえてくることから、「この流れって一体どうなんだろ??」と、この流れに関してとても興味を持っていて、そのようなことから今回の文章を書いています。
農政アナリストの山下一仁さんは、著書、「日本が飢える!世界食料危機の真実」の中で、
「過剰になった米から麦や大豆に転作して食料自給率を向上させるという名目で当てられている税金は毎年約2300億で、そこから作られる大豆や小麦は合計で130万トンにも満たず、それだけのお金があれば、一年分の小麦(約700万トン)を輸入して買えてしまうので、それを備蓄に回し、日本は得意な米を増産し、水田は水田として活用する方向に舵を切った方が、自給率的にも食糧安全保障的にも消費者負担の軽減という意味でも、より良いのではないか?」
というようなことを書かれております。
僕は「お金を払えば食料は外から買えるものだ」ということを大前提にしすぎない方がよいと思っていますし、大豆、麦の増産促進には賛成ですが、先に述べたように「増産支援の範囲に関しては再考の必要性もあるのではないか??」という考えを持っています。
後数年で、そのバランスが適切な形に整えられるとも思えませんし、急激に大幅増産できることもないと思いますので、現実的に考えて、山下さんのおっしゃっているような考えに納得のいく部分もあります。
この分野、知らないことが多すぎますので、もっと勉強したいと思います。
疑問は、いつも学び欲を刺激してくれます。