大切な人の大きな節目
4年半に渡り当園の野菜を使い続けてくださった南青山のフランス料理店、ランタンポレルの金川シェフが、お弟子さんと退職の挨拶に来てくれました。
独立に向けて、本格的に準備を始めるために退職なさるとのことで、前向きなお話を沢山聞かせていただきました。
シェフとお話をしていていつも思うのですが、表現したいもの、人にお届けしたいものの価値観に似たようなものを強く感じます。
農業もお料理も、「自然の営みにより育まれた素材の特性を見極め、それを最大限活かして良いものを作ろうと試みる」という意味では、似たような所があるからでしょうか。
とはいえ、全ての料理人とそういう感覚を共有、共感し合えるかといったら、そんなこともなさそうな気がします。
それを考えると、仕事の良きパートナーであり、信頼できる大切な友人でもある金川シェフは、僕にとって特別な存在であることに間違いはなさそうです。
シェフの素材や自然に対しての向き合い方は、かなり農業的自然感を覚えさせてくれるような所が多く、勝手ながら、一緒に仕事をさせてもらえていることに大きな喜びを感じていました。
しばらくシェフにお野菜をお使いいただけないことに寂しさを覚えはしますが、またすぐに表現のお手伝いをさせてもらえる時がやってくるような気がしていますので、その時がやってくる日を心待ちにしています。
季節の移ろいと共に変化してゆく、素材の質感や特性を存分に楽しみ尽くせるような美味しさの提供。
自然の恵みへの深い感謝を大前提に、そのようなものを一緒に考えていける人とお仕事をさせてもらえることは農業者としても幸せなことです。
畑仕事や農業の醍醐味は、 「自然の力を借りて育まれた、素材の魅力と美味しさを人に届けて喜んでもらう」 ということだと考えていますので、そのように思います。